第46章 金色の鍵
『このフロアはオーナーの部屋しかないのか』
『そうなんです。無駄に長い廊下ですよね』
『こんなに広いと、リサもさぞかし掃除が大変だっただろう・・・』
『え、えぇ・・・。でも、掃除は得意な方なので大丈夫ですよ』
リサとエルヴィンは麻袋の中から見つけた鍵を握りしめて、最上階にあるオーナーであるオレグの自室へ向かっていた。
見慣れた廊下の絵画やベルベットの絨毯。
いつもここを通る度に気持ちが沈んでいたのを思い出す。しかし、今はそんな気持ちは微塵もない。
リヴァイと共に過ごした日々が楽しくて、暗い気持ちを上回り軽くさせる。
『リサ、ここの鍵かな?』
『あ・・・、はい。開けますね』
先程の地下倉庫の鍵とは比べ精密度の高い鍵穴。エルヴィンのあの針金では開けることが不可能だなと人目見て理解した。
ガチャンと重い音を鳴らせ、ドアは解錠された。
『・・・・・・・・・っっ』
『これはまた・・・ひどい状態だな』
リサは思わず口を手で押さえる。
ドアを開けてみると、そこは以前と何も変わっていなくて最後に見たあのままの状態であった。
窓は割れ、破片は散らかり、壁や絨毯には銃弾の跡に血痕。窓辺には空になっているデキャンタ。
全てがあの日のまま。
『うっ・・・うぇっ・・・』
『リサ!!?大丈夫かっ?!』
上書きされたはずの気分が一気に蘇る。
オレグにされた乱暴、血が飛ぶ惨状、銃口を向けられた恐怖。ぐるぐると脳内を駆け巡り、酷い目眩に襲われ耳鳴りがすると思った瞬間、リサは気持ちが悪くなりしゃがみこむ。
『ごほっ・・・ごほっ・・・エルヴィンさん・・・ごめん・・・なさい・・・』
『気にしなくてよろしい。急に体調が悪くなるとは・・・何か嫌なことを思い出したのか?』
エルヴィンはリサの背中を摩りながら、腰に吊るしていた水袋をリサに渡す。
ありがたく受け取るとリサは急ぎ気味に口にした。
冷たい水を喉に通したおかげで、吐き気は落ち着き冷静さを取り戻す。
『少し・・・。でも、大丈夫です。落ち着いてきたのでこの部屋を調べてみましょ?』