第45章 探し物
『成程・・・。それは片思いってやつかな?』
『片思い・・・じゃないと思います・・・たぶん。私が寂しいと抱きしめてくれるし、少し強引だけど優しいし、強くて守ってくれて・・・仲間に慕われていて・・・』
『また随分と惚気けてくれるじゃないか。こんなにもリサに慕われ、幸せな男がいるものだ。しかし彼の態度から考えると、どう見ても両思いのように思えるのだが?』
『好き・・・と、言われたことがないんです』
自分の口から出た言葉が心臓に刺さったのかと思うほど胸が痛くなる。
思わず左胸を押えた。
『そうか・・・無粋なことを聞くが・・・そういう関係もあるのかな?答えたくないなら何も言わなくていい』
『・・・・・・あ、あり・・・ます』
破廉恥な返答に白い目で見られるかと思えばエルヴィンは何かを考えているのか、指を顎に置いている。
エルヴィンとは今日で2回目に出会った関係。
まだ初対面に近い。しかし、エルヴィンと会話をしていると不思議と問われた質問に答えてしまう。
人の心を引っ張り出す話術に長けているようだ。
『リサ、あまり心配しなくてもいい。男には何かを守るために犠牲を払うこともある。リサの想い人も考えがあって言葉にしないのだろう』
『・・・エルヴィンさんも何かを犠牲に・・・?』
『あぁ。それは数えきれない、悪魔に魂を売ったかのようにな・・・』
エルヴィンの大きな体にはいくつの錘が乗っかっているのか、覚悟と信念と決意に揺らぐ雰囲気に何も知らないリサは、それ以上聞くことは出来なかった。
『エルヴィンさん、すごく紳士的だし・・・優しいから・・・だから悪魔だなんて思えないです』
『そうかい?私の同僚が聞いたら皆首を横に降るだろうな。悪魔の化身になるやつだろうってね』
納得いかない様子のリサにエルヴィンは苦笑いをする。外の世界を知らず、ましてや地上の生活さえ知らないリサ。何も知らなくて、地下にいても真っ白で、だから正直に育ち純粋が故に騙されやすい。
『君が・・・リサが地上のレディになったら、それはそれは今よりも美しく・・・誰もが振り向くだろうね』
『・・・・・・え?』
『私と、地上へ上がるつもりはないかな?』
蒼い目がリサを捕らえた。