第45章 探し物
『なるほど・・・まぁ、このぐらいなら何とかなるか』
エルヴィンは片目で南京錠を覗きながら手を腰にまわし、ポーチの中から細い針を2本取り出す。
リサはまさか・・・と目で追いかけると、想像通りに鍵穴に2本の細い針を差し込み慣れた手つきで解錠した。
『・・・・・・よし、開いた』
『エルヴィンさん・・・何者ですか・・・?』
『ん?はは、リサは悪い大人にはなってはいけないよ』
諭すようにリサの頭を大きな手でポンポンと撫でる。
前にエルヴィンは何かの”調査”をしていると言っていたことをリサは思い出す。その事とこういった事をするのと関係があるのかな?と益々混乱する。
『リサ、ここに段差があるから躓かないようにしなさい』
そう言ってまた手を差し出す。
リヴァイに劣らずの端正な顔つきで、それでいて紳士的なエルヴィン。
『エルヴィンさん・・・凄くモテそう・・・。彼女か奥さんいるんですか?』
素直に疑問をリサはぶつける。
エルヴィンは何かを思い出したのか眉尻を下げて笑顔を見せる。
『いいや、昔は好きな女性がいたが・・・そのような存在の人はいないな。それともあれかな?リサは私にアプローチしてるのかな?』
『え?!や・・・、そ、そんなつもりは・・・。私みたいなお子さまはエルヴィンさんみたいな紳士的な男性とは釣りあえないですよ!』
『そんなことは無いだろう。君は地下街の女性というより、上流階級の美しいレディといった雰囲気だよ』
つい先日、自分の正体を知ったばかりのリサは思わず何も口にしていないのに噎せる。
全くリサ自身は今までと変わっていないが、祖母から教わっていた日々の仕草や身嗜み等がリサをそうさせていた。
『リサこそ、彼氏はいるのかな?』
まさか自分までその質問をされるとは思っておらず、リサは口を噤む。
リヴァイは彼氏ではない。これはリサが今までも何度も頭の中で言い聞かせてきたこと。
だけど、揺るがない気持ちがある。
『大好きな人はいます』