第42章 存在の大きさ
『まぁ・・・リサの母親が地下街へ向かった理由なんざ大方想像つくけどな』
リヴァイはため息をつき、テーブルに方肘を乗せ足を組む。
何者から逃げる。隔離する。
そう言った者たちには地下街はうってつけの場所。
嘘だと頭を抱えたはずのディックを想像すると、リヴァイも知らぬ男とはいえ同情する。
(だが・・・、リサがもし帰りたいと言えば・・・俺はどうする・・・?素直に行けと言えるのか?)
リヴァイの中に、アーヴェンの言葉が反芻する。
リサにとって地下街にいるより、安全で裕福な暮らしが約束されている地上へ上がった方がいいのは明確。
ファーランとイザベルとリヴァイの3人に戻るだけ。
仕事もやる事はいくらでもある。
先に起きた者の特権である寝顔観察。
工夫された美味い料理。唯一、自分が安心して任せられる腕がある清掃能力。
真面目で皆を笑顔にしてくれる愛嬌さ。
お互いの熱を分かち合い、安心をくれる身体。
それらが全てなくなる。
それだけのこと、と言う割にはなかなか大きい。
アーヴェンの話に真剣に聞いているリサには悪いが、リヴァイはそんなことを思っていた。
『リヴァイさん、大丈夫ですか?お買い物行って疲れているのに話まで付き合ってもらってすみません』
『いや、そんなんじゃねぇ。俺に気にせず話を続けてくれ』
リサに軽く微笑みかけると、アーヴェンとも視線が交わる。リヴァイは逸らすように瞳を動かし、目の前にある自分が買ってきたサンドイッチを食べた。
『リリー様がディック様の元から去ってから数年間。私はクララ様の指示で影ながらリリー様を見守り続けました。無事に出産し、リリー様の宣言通りの元気で可愛らしい女の子が生まれました』
『え?・・・・・アーヴェンさん・・・、ずっと見守ってくれてたのですか?』
『えぇ、クララ様の指示ではありましたがお傍におりました。・・・すみません、話を戻します。リリー様はリサ様を育てるために以前していた職業・・・娼婦に戻られました』
リサは胸が痛くなった。