第42章 存在の大きさ
『お父さん・・・お母さんを探しに行かなかったのね』
2人は愛し合っていて、父親は母親を何よりも大切にしていた。出生や身分の垣根を越え、赤い糸を手繰り寄せていたはずだった。
『ディック様はリリー様のことをよく分かってらっしゃいました。きっと、見つけても連れ帰ることは無理だろうと思っていたようです』
そう・・・とリサは納得いかないような顔でサンドイッチをかじる。
リサは父には母を迎えに行って熱い抱擁を交わすような御伽噺の展開を期待していた。
(リヴァイさんなら・・・どうだろ)
そもそも結婚以前に付き合ってもない。
そこがいつも足枷になって、それ以上の想像ができない。
(叫んで、手を伸ばしてくれる?・・・・・・わけないかぁ)
ちらりとリヴァイを見ると、何だ?というような視線が返ってきて首を横に振った。
リサは1人で考えている間にアーヴェンの話が始まり再び視線を戻す。
アーヴェンへ視線を戻すと、リヴァイがリサへ視線を飛ばしたのをリサは気が付かないでいた。
『ディック様はその後、リリー様とリサ様を失ったショックで元気がなくなられた。端正な顔立ちが痩せこけ、いつもどこか遠くを見ているようでした』
『クララ様もそんなディック様を見兼ね、新しい女性の紹介やパーティを開きましたが毎晩無意味に終わりました。そんな日々が暫く続き、クララ様もリリー様の存在の大きさがようやく分かってきたようでした』
─────はぁ・・・今のあなたではクララ・ミッシェルを任せられないわね・・・。そんなに愛しているなら立ち上がりなさい。今のディックじゃ、あの子がいても振られるだけよ。
・・・・・・・・・・・・私は、リリーの居場所知っているわ。
─────何だって?!母さん本当か!!リリーはどこにいる!!僕も探したんだ・・・連れ戻せなくてもいいから・・・元気かどうかだけでも知りたい。
─────全く・・・あの子の話になると、顔つきが変わるんだから・・・。あの子は・・・
『『地下街』』
リサとアーヴェンの言葉が重なる。