第41章 父と母
『クララ様は身篭ったリリー様を咎めました。ディック様も自分のお母様がこんなに反対をするなんて思っていなかったのでしょう。ディック様は諦めることなく、クララ様を説得してリリー様とお腹の子どもを守ろうとしました』
『旦那様を早くに亡くされ、女手一つでディック様を育てられ、大変苦労をなさったそうです。母の強い愛と経営者としてのプライドが故にあの様な発言をされたのでしょう。思えば、愛する人と一緒になりたい。添い遂げたい。2人の子どもを立派に育てたい。そんな女性として普通に思うことをクララ様はその時は忘れていたのです』
愛する人と一緒にいたい。
愛する人と添い遂げたい。
今のリサには深く突き刺さる言葉だ。
リヴァイを見ると、静かに目を瞑り聞いていた。
リヴァイに抱かれる時、リサは愛を伝える。
今までそれにリヴァイは言葉として応えたことは無い。リサは理解している。
一緒にいる為の約束もした。
お互いが愛していると言い合えて、抱き合い・・・繋がり、そして添い遂げたいと思い合えている母が羨ましくも思う。
『ディック様の説得が暫く続き、リリー様のお腹もふっくらと目立つようになった頃のことです・・・』
───リリー!!君の悪阻も落ち着いてきた頃だろう?だから、ウェディングドレスを作る為に採寸をしようと思うんだ!子どもが産まれて落ち着いたら3人で結婚式をしよう!母さんや周りが反対されても僕はするよ!小さな結婚式でも僕は君と子どもがいれば幸せだから!
───ディックさんありがとう。えぇ、悪阻も落ち着いて歩けるぐらいになったわ。私はディックさんのような素敵な男性と出会えて幸せよ。きっと、リサも自慢のお父さんだって思うわね。
───リサ?・・・子どもの名前かい?リサって女の子の名前じゃないか。産まれるまで性別は分からないだろ?
───ふふっ、いいえ・・・きっと女の子です。私には分かります。ディックさんのようにとても真面目で、優しくて、そして心の強い・・・女の子になるわ。
───そうかい?なら外見は君にそっくりだろう。美人で肌も白く、笑顔が可愛い・・・なんだか心配になってきたなぁ!変な男が寄らなきゃいいけどなぁ、ははっ!