第41章 父と母
───ディックさん、心配しないで。リサはきっと心から愛する素敵な男性と出会うわ!私たちの子どもでしょう?ちゃんと”私が”育てるので安心してください
───”私たち”・・・だろ?大事な大事なリサ。リリー・・・2人でリサを守ろう
───・・・・・・ありがとう、ディックさん。愛してるわ・・・あなたとの子どもが授かれて幸せよ
───ど、どうしたんだい?リリーが恥ずかしげもなくそんな事を言うなんて。・・・・・・僕もリリーを愛しているよ。ずっとずっと、君への想いは変わらない
『うぅっ・・・ひっく・・・お父さん・・・お母さん・・・』
『リサ、お前は親父さんや母さんに愛されている。ガキの頃の思い出が薄れても、それだけは絶対だ』
『・・・はいっ』
リヴァイはリサの涙を親指で拭う。
アーヴェンはそんな2人の様子に微笑むと話を続けた。
とても辛い話を・・・。
そして綺麗な便箋をリサに差し出した。
『手紙ですか・・・?』
───アーヴェン!!リリーがいなくなった!屋敷中どこにもいない!今日は出来上がったウェディングドレス見に行く約束をしていたんだ。悪阻がおさまっているとはいえ、お腹が大きくなった身体では1人で外出するのは危険だ!アーヴェン、彼女はどこへ行った?!
───ディック様・・・。これを・・・リリー様から預かっております。ご拝読ください。
───どういうことだ。何故、手紙なんかを・・・
〈ディックさんへ
ディックさん、あなたに感謝をしたいことが沢山あります。
ディックさん、私を見つけてくれてありがとう。娼館から抜け出させてくれてありがとう。結婚式しようって言ってくれてありがとう。私にリサを授けてくれてありがとう。
私がいなくなったらきっとあなたは悲しむかもしれません。だけど、悲しまないで。私はリサと2人でいつまでも心だけは寄り添っています。
あなたはミッシェル家の後継者。お母様が築いてきたもの、多くの従業員を護る使命があるのです。そんなあなたに私が相応しくないのはお母様が言わずとも分かっていました。
きっとお母様もミッシェル家を愛しているから、あの様なことを言ったのでしょう。だからお母様を恨まないで下さいね。