第40章 割れたティーカップ
リサは扉を開ける前にリヴァイに確認する。リヴァイは扉の向こうからの負の気配がないことを察すると、リサに頷いて許可を下した。
───殺気はないが、なんだ・・・この威圧感は・・・
殺気はないとはいえリヴァイは一応ナイフを構えた。
『はじめまして、リサ様』
『・・・・・・リサ・・・様??』
白髪のオールバックでロングヘアーを1つに束ね、髭も長い老人が手を胸の前にして会釈をする。
いきなり”様”を付けられたリサは首を傾げると、老人は優しい笑顔で、はい。と頷いた。
『リサ、誰が来たんだ?』
『おや?客人も来られてましたか。貴方はリヴァイ・・・様、で宜しいでしょうかね?』
老人はリサの後ろから顔を覗かせたリヴァイの顔を見ると、初対面のはずなのにまたもや名前を言い当てた。
『ほぅ・・・なにやら俺達のことを知ってるようだな。リサ、この爺さんを家に入れてもいいか?』
『え、えぇ。何が何だか分かりませんけど・・・とりあえずどうぞ・・・』
扉を大きく明け、リサがどうぞと手を招くと老人は失礼致します。と、姿勢のいいお辞儀をするとまたにっこり微笑みながら家の中へと入る。
すれ違う背は高く、身につけているスーツも気品がありそして機能的な作りで思わずリサは目で追いかけた。
『・・・私のスーツが気になりますか?流石でございます』
『あ、ジロジロ見てごめんなさい。失礼でしたね』
『いえ、構いません。何故ならこのスーツはクララ様がデザインされたものですから』
『クララって・・・おばあちゃんのこと?!』
『リサ、話がややこしくなりそうだ。・・・とりあえず座れ』
リサの腰を支え、リヴァイはリサを座らせた。今度はリヴァイが紅茶を用意しようとキッチンへ向かう。
キッチンの隅には先程割ってしまったカップが重なって置かれている。リヴァイは頭に残る要素を払い除け、静かに湯を沸かした。