第40章 割れたティーカップ
子供のころ、ずっと欲しくて必死になって手に入れた綺麗な紅茶のセット。初めて触るものに目を輝かせた子供のリヴァイはカップを持ち上げ、取っ手を持つと・・・、粗悪品だったのか取っ手が取れてカップの部分が落ちて・・・割れた。
パリーーーン!!
『きゃぁ!!リヴァイさんっ!大丈夫ですか!!タ、タオル!!』
リヴァイは割れたカップを見ると、次は取れた取っ手を見つめる。床に散った紅茶は床に染み込み出していた。
『・・・リサ・・・悪い、カップ割ってしまった上に汚してしまったな』
『リヴァイさんのせいじゃないですよ!こちらこそすみません!!たぶん、元から壊れかけていたのかもしれません。お洋服濡れてませんか?』
『俺の方は何ともねぇよ。それよりも破片危ねぇから触るな』
リサからタオルを取るとリヴァイは濡れた床を拭き、破片を集める。
割れた破片を集めていると、子供の頃と同じ心境になる。
ずっと欲しくて、やっと手に入れて、大事にしようと思っていた。
それが簡単にも打ち砕かれた。
泣きはしなかったが、子供心に深く傷つき2度と同じことにはなりたくない。
そう思って今まで過ごしてきた。
しかし今、目の前に割れたカップがありリサが心配そうにリヴァイを見ている。
『リヴァイさん、怪我・・・しないでくださいね』
大事にしたいものは失いたくない。
リサがいなくなるのはカップが割れるよりも辛い。
このタイミングで割れるなんて嫌でも負の連想をさせる。
『リサ・・・・・・』
ずっと俺の傍にいてくれ。
そう言葉に出来ずにリヴァイはリサを抱き寄せる。
『どうしちゃったんですか?悲しいこと思い出しちゃいましたか?・・・リヴァイさんが弱気なとこ見せるの・・・珍しいですね』
悲しそうな顔のリヴァイにリサはヨシヨシと背中を摩る。
コンコン・・・
『あ、はーい!お客さんでしょうか?』
『・・・・・・・・・』
また大事なものを失おうとしていたのは、まだ気づかない。