第5章 近付く距離(●)
ほら、と渡されたパンをリサは受け取る。
『リヴァイさん、こっちの方が大きいですよ?』
『…あ?そうだったか?にしても、いつも硬いパンがこんなに柔らかくなるもんなんだな』
興味なさそうにリヴァイは温め直したパンを口にする。リサはリヴァイがわざと大きめに千切って渡してくれたのに気づいていた。
『…リヴァイさん、ありがとうございます』
小さな優しさが嬉しくて笑顔になる。
『ほんと、お前は良い笑顔で笑うよな』
リヴァイは少し俯きながら首に手を当てて擦る。
リサの笑顔を見ると心の奥が暖かくなり、過去の自分を思い出す。リヴァイを見つけてくれたあの人と過ごした日々。
いつまでもこの笑顔を守りたい。
1人が寂しいというリサの傍にいたい。
『リ、リヴァイさんが優しいからですよ。あ!パンで手が汚れましたよね。今、お手拭き持ってきますね』
わざとらしく手をポンと叩き、リヴァイの横を通り過ぎるようとするとリサはリヴァイに手を掴まれる。
これ以上にないくらい顔を染める。
『チッ…。リサがそんな顔するのが悪い』
『ん!?』
グイッと引っ張られるとリヴァイは噛みつくように口付ける。
リサはリヴァイの名前を呼ぼうとするが、絶え間なく口付けされ何も喋れなくなる。
『は…あっ…、リ…ヴァイさ…』
思わず目から涙が溢れ出す。
『………リサ悪かった。泣かせるつもりはなかった』
ちゅっと啄むとリヴァイは親指でそっと涙を拭う。
潤んだリサの瞳を見ているとまた湧き上がりそうになるのをリヴァイは耐える。
『いえ、あの…その…嫌だったとかじゃないんです。』
『いや、俺もいきなり過ぎた。…すまん』
二人に沈黙が流れる。
しかし手は繋いだままで余韻が残るように手はお互い熱かった。