第38章 リーダーとフラグ
おいくら必要ですか?と近づくリサに男はたじたじになる。本気で少ないと思った訳ではなく、もう少し要求したらどうなるか・・・ぐらいの気持ちだった。
申し訳なさそうにしているリサを見て男はピンとくる。
『あ・・・えっとリサちゃんがそう言ってくれるなら・・・』
リサの財布のがま口がパチンと開く。
『やー・・・お金じゃなくて・・・1回ヤラせ・・・』
ヒュンッ!!
『え?』『え?』
リサと男は声が重なる。
リサの目の前にいた仲間の男の真横に、リヴァイがさっきまで磨いていたナイフが壁に刺さっていた。
無傷なリサに比べ、男の頬は僅かに血が滲む。
『よかったな。窃盗団の仲間だからな、これで聞かなかったことにしてやる』
『あ、あ・・・』
鋭い銀の刃を横目で泡を吹きそうになる。
突き刺さったナイフの回収に壁の前にリヴァイは立つ。
ずり落ちそうな男の耳元で何か囁くと、ひいっ!と白目を向き仰向きに気絶した。
『ちょっ!!だ、大丈夫ですか!!』
『・・・・・・こいつが悪いからほっとけ』
静かに首を横に振りながらファーランはリサを阻止し、ため息をついた。
『リヴァイさん・・・何を言ったのでしょう・・・』
リヴァイはフンっと鼻を鳴らすとナイフを抜き、またナイフを磨きにソファへ戻る。
『リサ、お前は愛想いいのはいいが程々にしとけ。良からぬ事を考えてるやつもいるからな』
『わ、私のせいですか?!』
交互にリヴァイとファーランを見ると、ファーランは困ったように頷く。
リヴァイは未だに気に食わない顔をしてナイフを磨く。
『ここは女の子より男が多いんだよ。窃盗団でイザベルみたいな子もいるけど、女の子は稀だからね。男ばかりでむさい中に、リサのような存在は皆の花なんだ』
『ファーランさん・・・私が花だなんて・・・ただ、身の回りのお世話したり・・・掃除したり・・・たまにお話したりぐらいですよ?』
今さっき倒れた男に最近よく話し掛けられるのは自覚していたが、そんなやましい雰囲気はなかったし、何なら手伝ってくれることもあった。
リヴァイに何を言われたのか分からないが、気を失う程なのは不憫である。