第34章 襲い掛かる手
『お幸せに・・・ローザさん』
人差し指でスっと目尻を拭う。
恋敵から友達。不思議な2人の出会いは離れていても続く。いつかリサも地上で住むことになれば手紙を出そうと、いつかの未来を楽しみにする。
『立体機動装置外したばかりだし、少し・・・見てみようかな』
手を後ろに組んで高い建物を見上げる。
目の前のオレグの娼館。
リサはずっと気になっていたことがあった。それはおばあちゃんが渡してくれた反物のこと。もしかしたら館内のどこかに残っているかもしれない。
憲兵団に押収されている可能性もあったが確認したかった。
───すぐ帰れ。お前はすぐ巻き込まれるからな。
リヴァイの言葉を思い出す。
『まさか、こんなすぐに何か起きるわけないよね。リヴァイさんが過保護なだけよ。サッと見てから戻れば大丈夫!!』
悪い事をしてるわけではないのに、どこか後ろめたい。
大丈夫・・・大丈夫・・・と、ゆっくりとオレグの娼館に近づく。
『あっれーー??何処かで見た顔だと思ったら・・・あの時の女じゃねぇか!!』
もう少しで扉の前というところで、思い出したくない男に見つかってしまった。
『あの時以来だなぁ?あの男のせいで、ほら見ろよ!イケてる顔が台無しだ!!』
ずかずかと近寄ってきた男はリサの目の前で自分の額を見せる。連れていた他の男も後からリサに近づくとニヤニヤとしていた。
リサはちらっと男の額を見るとぱっくりと割れた跡がある。大きな体に見下ろされ、リサは恐怖で声が出ない。
『キーランドさんの顔に傷つけたのは運の尽きだったなぁ』
『だろ?この女はきっとあのチビ野郎の女だ!あぁ・・・良いことを思いついたぞ・・・』
キーランドと呼ばれた大柄な男は連れていた男の肩を組むと、ははは!と笑った。
『な・・・何・・・』
『あの時の金を奪われてなぁ~、色々困ってんだよ。女も暫く味わってねぇし・・・丁度いいのがいたわ』
─────!!??
肩を組んでいたキーランドは連れの男に顎で合図をすると、リサの腕を掴む。
『いたっ!!・・・離して!!いやっ!!!誰か・・・』
通り過ぎる人は疎らにいるが、見て見ぬふりをする。
『暴れんな!!・・・いい所に、空き家が目の前にあるな』