第33章 シュシュとお見送り
リサは朝から自室で立体機動装置の手入れをしていた。危険を冒して、大金まで払ってまで用意してもらったリサの大切なものである。
『ピカピカになったね!まるで鏡みたい』
シルバーの部分に自分の顔を写し、身嗜みを整えるかのように顔を動かす。
そして、じーっと自分の顔を見る。
『口紅ぐらい付けようかな』
娼婦をしていた時は毎回のように化粧をしていたが、リヴァイの元へ来てからは全くしていない。元々肌質は悪くないが、どこかパッとしない。
滲み出される色気というのは自分では分からないもの。
『リサ、準備は出来たか?』
『あ、時間!リヴァイさん!今、行きますっ』
ドアの向こうからリヴァイの声がする。
リサは色が余り付かない程度に薄く唇に引くと立体機動装置を抱えてリヴァイを迎える。
お待たせしました!と扉を開けると、いつもの優しい眼差しがあった。
『ちょっと遅くなってしまいましたね・・・すみません』
口紅を選んでいたからとは言えずに謝った。
『構わねぇ。・・・・・・口に何か塗ってるのか?紅か?』
顔を近づけ、唇一点にまじまじと見られ唇から赤くなりそうになる。
ふにっと親指で下唇に触れられると、もう止まることなく顔も赤くなってしまう。
『さ、最近あまりお化粧してなかったので薄く塗ってみました!』
『そうか。リサがやりたいようにすればいい』
あまり興味がなかったかなーとリサは少し残念に思っているとリヴァイの指が唇から離れる。
『だが、こう・・・紅を塗っていると口付けがしにくいな。何もしていないお前もいいが、それはそれで似合っているからな。折角付けた紅が口付けで取れてしまっては意味がないだろう』
今はこれで我慢してやる、とリヴァイはさっきまでリサの唇に触れていた親指を自身の唇に当てた。
『も、もう・・・リヴァイさんったら・・・』
なんて様になるんだろうとリサはドキドキしながら、抱え持っていた立体機動装置を装着する。
『リヴァイさん!行きましょう!』
『あぁ・・・張り切りすぎて落ちるなよ?』
『そんなヘマはしませんよ!』
2人は目が合うとニッと笑い地面を蹴る。
今日はローザが地下街から去る日。