第27章 同等の価値
『リサよ、俺は落ち着いている』
『そ、そうなんですか?』
眉間は寄せたままなのに口に出す口調は穏やかだ。
リサは手を離そうとするが、次の言葉で今度は腕を抱きしめることになる。
『どうせ手に入った金でくだらない事に使うんだろうな・・・酒か?女か?・・・なら、喉をかっ捌いて・・・汚ぇシモを切り落とすか・・・』
見る見る男は青ざめていく。
『そ、それじゃ、死んじゃいます!!ハンカチなんかにそこまでしないでください!!』
『ただのハンカチなんかじゃねぇ。アレは俺の宝だ・・・俺にはアレはお前と同等の価値があると思っている』
『──えっ・・・!』
自分のことを宝だと言われたようでリサは口が開いたまま頬を染める。
そんな感傷にに浸ってる場合ではないと首を振り、リヴァイの腕をぎゅっと抱きしめた。
『く、くそ・・・勝手にやってろ・・・!!』
今のうちにと大柄な男は赤ん坊のように四つん這いでしばらく進むと、路地裏の闇へと消えていった。
金貨が大量に入った小袋を落として。
『チッ・・・・・・雑魚が・・・』
リサが掴む位の力ではリヴァイを抑えられないが、ナイフを持っている側なだけに下手に腕を動かすわけにもいかなかった。
男が走り去るのを見届けるとリサはすみませんと手を離す。
構わねぇ・・・とリヴァイはリサの頭をポンポンとすると落ちた金貨の入った小袋を持ち上げて上下に振る。
『まぁまぁの金額で売れたみてぇだな・・・。この様子じゃ、地下商人を探して買い取るにしても反吐が出るような金額かもな』
『リヴァイさん・・・』
『・・・いつか見つけて取り戻す』
リサは自分か作ったハンカチ1枚がこんなにも大事に思われていて嬉しかった。同じハンカチを作ろうと思えば作れる。しかし、リヴァイはあのハンカチがいいのだろう・・・と。だから敢えてリサも作り直すとは言わなかった。