第26章 面白くない子
『もう、ここに来るつもりはなかったんだけど・・・。でも筋は通さないとね』
朝も夜も関係のない地下街なりの煌びやかさ。
後ろを振り向くと自分が働いた娼館があり、目の前にはオレグが通いつめていた娼館・・・つまりはローザがいる店である。
リサがいた店はあの事件があってからは封鎖されていて、外装とは裏腹に建物内は静かそうであった。
そのおかげなのかローザがいる娼館は賑わいがあり、人の出入りが多い。
リサはグッと手を握り締め、目の前の娼館の門を潜った。
『いらっしゃいませ~!あら、可愛い女の子1人で何のご用かしら?面接?』
『ちっ!違います!!ここで働いている人に用が有るんです』
『そぅ~?貴女ならいぃ稼ぎ期待出来そうなのに・・・』
折角娼婦から足を洗ったのに!とリサは大きく首を横に振った。
受付なのに太い葉巻をふかせ煙を吐く。涙ぶくろが色っぽい受付嬢はカウンターに肘をつく。
『まぁ、いいわ。今日はお客さんが多いから希望聞けないかもしれないけど、誰がいい?』
『え…?私は女ですけど・・・』
リスト帳のようなものを出され、リサはそのまま指で紙を押し帰す。
しかしまた押し返される。
『あら、女の子同士だっていいのよ?そういう女の子も来るわ。ほら、女の子同士のほうが身体のことよく分かるし、分かってあげられるじゃない?』
『ほ、ほんとにそういうのじゃないんです!』
『そう・・・残念。私なら貴女を可愛がってあげるのに』
受付嬢は自分の唇を舌でぺろりと舐める。同じ女性だというのにリサはドキリとする。
同性同士が愛し合う行為に異論はないけど、地下街の性への自由奔放さに付いていけそうになかった。
そうこうしていると、他の客が来るものだから場所が場所なだけにリサは居た堪れなくなり部屋の隅へと身を寄せる。
『貴女、結局誰に会いに来たの?』
今来た客の書面に書き込みしながら受付嬢は言う。
『ローザさんです』
受付嬢は書面の書き込みが終わり、客を迎えに来た娼婦に指示を出すと客に手を振る見送る。
視線をリサに戻すと、先程までの艶やかな笑顔が消えると無表情になった。
『もしかして・・・男関係かしら?』