第21章 翼の幻
風を切りながら2人は立体機動装置で地下街を飛ぶ。
『リヴァイさん…怪我大丈夫ですか?』
『あぁ、何度も聞かなくていい。気にするな…なんて事ねぇ』
なんて事ないでしょ…とリサは顔を伏せる。
自分を助ける為に、窓を割ろうとして手を強打し続け、悔しさから唇は噛み切れている。
そしてさっきはリサを守る為にリヴァイの太腿に銃弾が掠めた。
これだけの怪我をさせてしまって、リサはどうしたらいいのか分からなかった。
リヴァイはさっきまで何度も自分を心配していたリサが急に静かになり、視線をリサに向ける。
『リサよく聞け。俺らはそれぞれの判断や意思でやっている。アイツらだっていくら俺が指示をした所で嫌だと言えばそこまでだな。この怪我もお前を助けたいと思った俺がしたことだ。俺も間違っちゃいねぇし、リサも…間違っちゃいねぇ。だから、後悔するな』
このご時世、命あるだけマシだ…とリヴァイは少し口角を上げる。
つくづく心も体も救われていると改めてリサは思った。
『そろそろファーランが取り付けた場所じゃねぇか?』
『え…ファーランさんが言っていた場所って…』
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら小さい体が大きく手を振っている姿が見えた。
『『お姉ちゃーーーん!!ほんとに飛んできた!』』
近くに着地すると2人の兄弟はリサに駆け寄った。
『あ、あなた達はあの時の…!』
リサの周りですげー!と立体機動装置を輝いた目で見つめる兄弟はこの間リサがパンをあげた子供たち。
まさかこんな小さな子供たちの家が避難場所だとは憲兵も思わないだろうと考えたファーランの策だった。
『あれー?あの髪の明るい兄ちゃんはー?姉ちゃんの彼氏なんだろー?』
『はい?えっ?!ファーランさんのこと?!』
『リサ……くくっ…お前、ファーランの女か…』
『皆、待って!ってか、リヴァイさんのその感じワザとですよね?!』
珍しく笑っているリヴァイにリサは嬉しくなる。
『えー、違うのかよぉ。あの兄ちゃんと姉ちゃんお似合いだぜ?……ひっ!!』
リヴァイの睨む目に気づいた兄弟は青ざめてお互い抱き合った。