第20章 今、出来ること
『り、立体機動装置じゃないですか!!』
『そうだよ。前に約束しただろ?この立体機動装置はリサの為に用意したものだよ。俺とリヴァイが娼館のことを調べてる間にイザベルにコレを探してもらっていたんだ』
ワインレッドのシルクに包まれている立体機動装置は銀色に輝き美しい。そっと手を触れると新品なのが分かる。
『まぁ、これも横流し品だね。兵士になったもののすぐ辞めた者がこっそり売ったんだろうな。ガスも満タンだし、調整済みだからすぐ使えるよ』
『ほんとに…ほんとに…ファーランさんも…イザベルも…リヴァイさんも良い人過ぎます…』
一人ぼっちだった自分に仲間が出来て、借金の為の娼館から助けてもらい、今も身体を張って戦っている人もいる。手に入れるのも困難なはずの立体機動装置も目の前にある。
リサは涙が溢れる。
―――――私は、彼らに何が出来る?
―――――守りたい…役に立ちたい
―――――今、出来ることは…
『ファーランさん!ありがとうございます!約束の蒸しパンいっぱい作りますね!』
楽しみにしてる、とファーランはにこやかに笑った。
『リサ、この袋の中に着替えが入っている。着替えてベルトを付けたら立体機動で次の場所へ行こう。……次の場所で合流出来るはずだ。後ろ向いているから着替えて』
『……はい』
ファーランが後ろを向くと袋の中を漁る。
下着やシャツなどもきちんと畳まれていて、だれが用意してくれたのかすぐ分かる。
『(ブラのサイズまでピッタリ…)』
ここまで知られていると恥ずかしさを超えて驚きしかない。色も控えめでこういうのが好みなのかとリサは思った。
黒のパンツに白のシャツ、それにバーガンディのベストと焦げ茶のブーツ。
『(…リヴァイさんの服に似てる)』
立体機動装置のベルトを付けながら、お揃いのような気がして頬が緩む。
『リサ~もう準備出来たか?』
リサを見ないように後を向きながらファーランは確認にする。
『も、もうちょっとです!すみません!』
…
…
…
『リサ~、悪いけどちょっと急いで…』
パシュッ!!
『パシュッ?ん…?あっ!リサ何処へ!?』
リサはアンカーを両サイドの建物に飛ばしていた。