第20章 今、出来ること
リサとファーランが角を曲がるのを確認すると、後ろから大勢の憲兵の声が聞こえ出す。
角を曲がり切る最後まで心配そうに見ていたリサはファーランに任せておけばいい。
捕まるようなヘマはしない。
娼館内の時とは情況も違い、万が一にリサを盾にされるようなこともない。
殺すことに躊躇する必要もない。
目を閉じてポケットに仕舞っていた宝物を握る。
『テメェらにはガス1本で十分だ。………来いっ!』
左胸の前でナイフを逆さに持ち、憲兵の集団に飛び込んだ。
『ハァハァ……、ファーランさん、ここは…?』
『前まで物置として使われていた場所だよ。人目に付きにくいでしょ?……って、リサ!足から血が!』
『あ、これはちょっとガラスで切っちゃって…大丈夫です』
窓から落ちる前に切った足のことを頭から抜けていた。痛みよりも目の前に起きている事に対応するのが精一杯であった。
今も1人で残って戦っているリヴァイは怪我をしていないだろうか…と、その事しか考えていない。
『…リヴァイなら大丈夫。あいつは強い』
『はい。でも、やっぱり心配です…私は平気なのでファーランさんはリヴァイさんの所へ加勢に…』
『駄目だよ。俺はリヴァイの元へは行かない。俺たちのリーダーが君を頼むと言ったんだ。だから、俺はリサを守らないといけない』
悲しそうな瞳で見つめられるが、心を鬼にして強い目で伝える。リサはそれ以上ファーランを説得するような事は言わなかった。
『ほら、足の手当てするよ。そのままじゃ、雑菌が入るからね…そこ座って…。…結構切れてるなぁ…この怪我で走るの痛かったよな?ごめんな』
近くの木箱を持って来るとファーランはリサを座らせる。足の確認の為に軽く持ち上げると、リサの太腿がチラリと見え、ファーランはこれ以上見ないように我慢をする。
例のものと隠していた布袋から、包帯と度数が高いアルコールの小瓶を出し、消毒してから包帯を巻いた。
『ったた…。手当てありがとうございます…』
『応急処置だから無理するなよ?リサに例の物の正体を教えないとね』
ファーランはニヤリと笑い、奥から大きめの頑丈そうなケースを取り出した。