第1章 アップルパイ【孤爪研磨】
忙しなく過ごしていると、日々というのはあっという間に過ぎるもので。
楽しみにしていた土曜日はあっという間にやってきた。
朝一番で、お母さんと近所のスーパーへ買い物へ行き必要なものを揃える。今回はパイシートは使わない。
せっかくなので、パイ生地から作るのだ。
リンゴは家に沢山あるので、バターや強力粉など他に必要なものを買い足して、すぐ様家に戻る。
お母さんと一緒にキッチンに立ち、エプロンを付けて気合いを入れる。使う材料を並べるだけでワクワクしてしまう。
まずは寝かせておく時間が必要なパイ生地だ。
強力粉、薄力粉にバター、冷水。必要な分だけ計って取り分け、手順通りに混ぜていく。うん、順調だ。
早速バターの匂いがして食欲がそそられる。
何となく一塊に落ち着いたら、四角く形成してラップに包んで冷蔵庫へ。
次はリンゴだ。
お母さんに皮むきを手伝ってもらい、何とか切り終わると、次はお鍋で煮ていく工程だ。
お砂糖と一緒に煮ているリンゴがとてもいい匂い。
バターとシナモンを少し入れて、さらに煮る。
「ちゃん、味見してみる?」
『ほんと!?』
「ちゃんたら、食べたいーって顔してるもの。」
『うそ!?は、恥ずかしー。でも食べるっ。』
「ほら、フーフーして、あーん。」
『もう、お母さん。小さい子じゃないんだから大丈夫だよ。··········ん!!美味しい!!』
「良かったね、じゃあ冷やしておこうか。」
『うん。』
パイ生地も、そろそろ次の工程だ。
キッチンに香る、バターやらリンゴやらの幸せの匂いに釣られて笑みがもれる。とっても楽しい。
寝かせていた生地を取り出して、綿棒で伸ばしながら何回も折りたたむと、どんどんと生地がなめらかになっていく。
ちょんちょんと触ってみると、赤ちゃんの肌を触っているみたい。
また生地を寝かせておかないといけないので、少し時間があく。
今のうちに、研磨とクロちゃんに声を掛けておかなくては。
お母さんに一声かけて、研磨の家に向かった。
秋に入った外の空気は、程よい温度の風を運んで、私の髪を撫でていった。