第1章
〇
その後、挙式が始まるまでの間はの話で持ちきりだった。兄弟達の話によると、は椿・梓・棗の次に生まれた朝日奈家待望の長女であり、現在22歳であるという。
「はなんと、あの『No Name』のベーシストなんだよ」
椿が得意げな顔をして絵麻に言う。彼は先ほどからにべったりで、相当に溺愛しているということが短時間でもよく分かるほどだった。
「えっ…うそ…本当ですか!?」
絵麻は驚きを隠せないまま、ソファに座るの顔をまじまじと見つめた。音楽にあまり詳しくない絵麻でさえ知っている有名バンドだったからだ。
彼女の視線に気付いたは、ちょっと照れたように頭を掻いて笑う。その笑顔はまるで太陽みたいだと絵麻は思った。
「うん、そうだよ。いつもは包帯で顔隠してるからあんまり気づかれないんだけどね」