第1章
は少し困ったような笑顔を浮かべて、自分を取り囲んで立つ兄と弟の姿をぐるりと見渡した。何人かは泣いていて、泣いていなかったとしても、きゅっと唇を噛んで泣くのを我慢しているような表情をしていた。
がたまに家に帰ってくると、毎回毎回このようなことになってしまうのだ。自分の事が大好きすぎる兄弟達に、時として困らせられることもあるが、その溢れんばかりの愛情を一身に受けられる幸せもまた、よく理解している。
「さて、最後は」
じっ、と全員の視線が、絵麻に集中した。絵麻は少し頬を染めて、まるで花が咲いたような微笑みを浮かべながら口を開いた。
「さん、お仕事頑張ってください。…あと、色々とお話しできて楽しかったです。これからも、よろしくお願いします」
「うん、昨日はお風呂で色々話せて楽しかったね。今度帰ってきた時はお風呂だけじゃなくて、一緒に寝ようね」
「えっ…あのっ…」
赤面する絵麻といたずらっぽく笑うの様子を見て、兄弟達は一瞬耳を疑い、それから一斉に声を上げた。まるで蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
「「「えっ!??どういう事だよ?!!!風呂ってお前…」」」
くわっ、とまるで覆いかぶさるようにして問い詰めてくる兄弟達に対して、は挑戦的な笑みを浮かべて、ウインクした。
「女同士、何も問題ないでしょ?こういう特権をどんどん使っていかないとね。みんなには俺、負けないから覚悟しといてね」
「「「うぐっ(かわいいっ。いやいや、ひとまず今はそれは置いておいて…のことが大好きだけど、絵麻だけは譲りたくない!っていうかも譲りたくないっ。あ゛ーーーっ、どうすれば!いや、でも、好きなものと好きなものがくっついたら、ものすごく可愛いものが出来上がらないか?!それを愛でるというのもまた楽しいかも…。いや!でも…)」」」
の放った一言により、兄弟達は長い長い葛藤の渦に叩き込まれ、もんどり打つことになったのだった。
おわり