第1章
「あーっ!!兄!!帰ってきてたのかよ!!」
静謐な空間に、突如として賑やかな声が響き、その声の大きさに絵麻は思わず肩を震わせた。
「侑介」
絵麻を抱いたまま、青年は声のした方を見て言った。人形のように整った顔が美しい微笑みを浮かべる。
声の主は朝日奈家の十一男で、トレードマークの赤いツンツン頭を揺らしながら、満面の笑みでこちらに向かって走ってくるところだった。
「兄ーっ!!」
その後ろからは侑介同様に駆けてくる昴、風斗、弥などの弟軍団と、一拍遅れて歩いてくる兄達の姿があった。
あっという間に、兄と呼ばれた青年と絵麻は大勢の男達に取り囲まれたのだった。朝日奈家大集合である。
「、帰ってたんだね。おかえり」
と、長男の雅臣が言う。
「おかえりなさい、体調を崩していませんか?」
と、次男の右京が続く。しっかり者の上二人らしい第一声だ。
「、おかえり。相変わらず、髪も肌もキレイ」
いつも以上に穏やかな表情を浮かべている琉生。
「兄、今回はどれくらい家にいられるんだ?なぁ俺、兄と遊びに行きたい!」
普段はむっつりと黙っていることの多い昴が、絵麻が今までに一度も見たことの無いようなはしゃいだ表情をしている。
「あーっ、ずるい!僕も僕もーっ!」
抜けがけをしようとした兄に、末っ子の弥は頬を膨らませて全力で抗議する。