第1章
だがそんな呑気な気持ちは、思いもよらない方法で現実へと引き戻されたのだった。
ちゃぷ、と水音がして、すぐ隣に座っていたが動くのを感じた。もうお風呂からあがるのだろうか、と思って絵麻が目を開けると、すぐ目の前に濡れたの顔が迫っていた。
「えっ、さん…?」
驚く間もなく、チュッ、との柔らかな唇が自身の唇に重なった。
「!」
絵麻が目を丸くするのを、は黙って見つめていた。その目元は優しく細められていて、包み込まれるような穏やかさがあった。
触れるだけのキスはすぐに終わり、唇を離したがちょっと笑う。
「急にごめん。我慢できなかった。君とは今日初めて会ったけど、好きになっちゃったみたい」
「えっ…それは姉妹として…ですか?」
「ううん、違うよ」
そう言ってはもう一度絵麻にキスをした。
「こういう意味で。俺、バイなんだ。「私」呼びの方がいいならそうするよ」
「いえっ、そういう事ではなくて…」