第1章 私も今日からヒーロー科
「さむっ、」
運がいいのか悪いのか。
私が飛ばされた先には、推薦1位で入学した轟焦凍くんもいた。
そして飛ばされた先に座り込んでいる私が顔を上げるとすでにヴィランは氷漬け。
「子ども一人に情けねぇな。しっかりしろよ。大人だろ。」
そういい捨てた後に、私の手を取って体を起こしてくれた。
「ありがとう…。」
「あぁ。お前…無個性か?」
「一応。」
「なら、俺から離れるな。必ず守ってやる。…聞いてるのか?」
タマゴと言えど、ヒーローを目指す人だからだろうか、それとも、単純にこの人がかっこいいからだろうか。
この場に不謹慎ではあるけど、見惚れてしまった。
氷に包まれた右側、それすらも美しい。
「あぶねぇっ、」
「ごめっ…!」
はっとした。
見惚れているとヴィランの攻撃が私に飛んできたようで、私の肩を抱いて轟君がかばってくれた。
「大丈夫か?」
「っ…、はい。」
顔を上げると、意外と近くにある整った顔。
好き嫌い関係なく、イケメンをこんなにドアップで見るのは心臓に悪い。
火照った顔を、轟君の半身にある氷が冷やしてくれていると感じるほど熱がこもっていた。
それからの道中も雑魚ばかりなのだろう。
轟君が私を庇いながら移動していて、そのたびに氷漬けにされていくヴィラン。
轟君の左手が私の右手をぎゅっと握っていてくれる。
その手にひかれるまま、私は安心して歩くことができた。
でも、その反面、轟君に少しずつ増えていく小さな傷に心を痛めていた。