第1章 私も今日からヒーロー科
一日、何事もなく終了…、というわけにはいかず…。
「おい、テメェ…、」
「かっちゃん…。」
陽が傾き、辺りがオレンジ色に染まるころ、
かっちゃんは門の近くの柱に寄りかかって立っていた。
ポケットに両手を入れて、不機嫌そのものだった。
「かっちゃんには、話さなきゃって思ってたから…、丁度よかったかな。」
「いいから早く言えクソが!!」
それはそれは目が吊り上がった状態でズカズカと私の元へ寄ってくるかっちゃん。
「私の本当の個性は、“受契”。一つだけ、誰かから個性を受け継ぐことができる個性なの。
だから、受け継ぐまでは実質無個性だった。」
「だからって、テメェが俺より強ぇってことにはならねぇからな…!」
「わかって…」
「テメェは俺に守られてればいいんだカス!!」
不機嫌だなんて、違う。
切羽詰まったような、苦しそうな表情。
かっちゃんは、後ろを歩いていた私やデクがここまで追いついたことが許せない。
だけだと思ってたけど、そうじゃなくて、一番強い頂点こそが自分の居場所だったんじゃないだろうか…。
その居場所がどんどん埋まっていってしまう苦しみは、どれだけ辛いことなんだろう。
でも、かっちゃんは勘違いしてる。
「私、かっちゃんのこと追い越したいわけじゃないよ…!」
「あぁ!?」
「私、かっちゃんがヒーローになる応援がしたい。ちゃんと、私のところに帰ってきてくれるヒーローになってほしい…。」