第20章 邂逅の呼吸
「…無意味だ。こんなことに意味などない」
「それでも…このまま日が明けるまで耐えれば私たちの勝ちになる」
そう言って刃から手を離して無残の服にしがみつく
千年も生きたけど、自分の技量くらい自覚してる。せっかく師匠が稽古をつけてくれたけれど…私では真っ向から切り合ったら絶対に勝てない
私がしがみ付くこの一連の流れの間、無惨は一切抵抗しなかったが…
それはそうすることすら意味のないことだからだと、次の瞬間気づく
突然心臓に激痛が走った
「相討ちが狙い…か…だがそれは叶わないな」
「……これ…なに、が…」
「人間を食べずに人間の真似事をしてきたお前が私を抑えられるわけがない。物理的にも…精神的にもだ」
苦しさのあまり自分から手を離して、そのまま後ろに数歩下がる
息ができない…声も出せない…ッ!
酸欠の金魚のように口をパクパクさせて身悶える
「私の血には細胞を変化させる作用がある。お前は他の鬼たちより少々耐性があったようだが…今の行動で自分から血を受けいれてしまったようだ」
自分の体を貫いたままの刀を引き抜いて捨てながら、無惨はこちらに近づいてくるけどそれから逃れる思考は残ってなかった
今まで散々痛みは体感してきた。でもどんな痛みも時間さえあれば治癒していく
でもこの激痛はいつまで経っても収まらなさそうだった
「苦しいだろう…無理もない。たとえ上弦の鬼だろうとその量の血を一度に取り入れたら耐えられないだろう」
「……ッ…」
「…それでも足掻くか」