第20章 邂逅の呼吸
痛い
すごく痛い
今すぐ死んでしまいそうなくらい
でも逃すことはできない
そう思って、近くに寄ってきた無罪のズボンの裾を強く握って離さない
それに感心した無惨が、苦しんでその場で蹲る私を抱き起こす
頸を狙って手刀を叩き込むなり方魔を蹴りつぶすなりいくらでも抵抗のしようはあるが、今そんな余裕は微塵もなかった
「お前が苦しむのは本意ではない。元々今回は偶然だ…これで見逃してやろう」
「どういう……ッ!」
なにをするのかと思いきや、首元に噛みつかれた
そのまま血を吸われる…不思議と激痛がゆっくりと引いていく
痛みがなくなる頃には、血を失った反動でうまく身動きが取れずにいるしかなくなっていた
体内に入った無惨の血を大分持っていってくれたらしい…
「こんなものか。日が昇る前には回復するだろう…日に焼かれる前にこの場から去ることだ」
「…どうして…」
そう言っても鬼舞辻無惨は少し微笑むだけでその場を去っていった
動けるようになったのはそれから数分後…今日の昼間は大人しく近場の洞窟にでも隠れて過ごすことにしよう
蝶屋敷に持っていく筈だった菓子折も落としてしまったことだし…考えたいこともできてしまったし…
何より、異様なほど気怠い
どれくらい血を吸われたのか知らないが、前に猗窩座にボロ負けしたとき…
とまではいかないが、それほど一度に血を失いすぎたようだ
目覚めた時の安全も保証できないので、周囲に人の気配のない近場の洞窟で休むとしよう
ノロノロとその場を後にして、いい感じの洞窟を探しに歩いた