第20章 邂逅の呼吸
「その様子だとまだ思い出せてはいないのか」
「…思い出す…?一体何を…」
「言ってしまったら面白みに欠ける。それは自分で思い出すといい」
目の前に立っている洋風な服を見に纏った…〝鬼舞辻無惨〟は愉しそうに微笑んだ
この世界が血に塗れてしまった諸悪の根源
存在を知るものなら誰もが畏怖し、恐れ、そして怒りを覚える対象のはずなのに
…私も、その一人だったはずなのに
なぜかその微笑みに引っかかるものがあった
動けないでいる私に、くるりと背を向けて…無惨が一言
「じき日が昇る。ここは手を引こう…次に会う時を楽しみにしている」
「…待ちなさい」
確かにこの男には何か引っかかるものがある
それが何なのか今の私には見当もつかない
でも一つだけわかっていることがある
「…私は鬼殺隊…何もせずにここであなたを逃したら…私のこの千年は無意味になるの」
口笛で鎹鴉を呼んで、手早くこのことを伝えるとお館様のもとに行くよう指示をして刀に手をかける
…私には剣才がなかった。それは千年経った今も変わらない
きっと一人では一太刀も浴びせられないかもしれないが…そんなことはどうでもいいのだ