第20章 邂逅の呼吸
その日も何気ない一日のはずだった
いつものように夜になったら巡回の任務を務めて…
特に鬼の出現もなく、鎹鴉からの伝令もなく、何事も起こらずに時が過ぎていっている
日が落ちる前に買っておいた菓子折を持っていつものように蝶屋敷に戻る…
はずだった
「…ッ……な…なに…?」
急に心臓が酷く大きな脈を打ち始めて、手に持っていた菓子折を落としてしまった
足を止めてその場に蹲る
こんなこと今まで経験がなかった…血を欲している飢餓状態の時とは違う…
別の動悸に襲われる
なぜ…どうして…
そう考えは巡るものの、本能的になぜかはわかっている自分がいた
これは…
「…奇遇だな…本当に奇遇だ」
「……は…はは………なんで…ここに…」
声が聞こえて、地面しか写していない視線を上に持ち上げるとなぜか見覚えのある姿が目に入った
どうして見覚えがあるかはわからない…だって私には人だった頃の確かな記憶はまだ戻ってないのだから
……何で…〝人だった頃の〟記憶と関わりがあると思ったんだろう…?
怯えた子供のように、一歩後ろに下がる