第19章 色変わりの呼吸
そんな思考が巡る中、禰豆子ちゃんは立ち上がってゆっくりゆっくりと歩き始めた
瞳はぼんやりと霞がかったまま…ぼうっと歩き続ける
…外へ
「念のため聞くけど、外に出しても良いの?」
「いや…せめて炭治郎が戻るまでは駄目だろう」
「だよね。…禰豆子ちゃん、きっともう直ぐお兄さん帰ってくると思うから、もうちょっと待っ…」
玄関の引き戸の目の前でずっと立っている禰豆子ちゃんの手を握ろうと、手を伸ばしたその瞬間
ものすごい勢いで戸を蹴り破ったものだから思わず時が止まってしまった
そのまま軽やかな足取りで外に出ていく後ろ姿を慌てて追いかける…と
「……あ…」
禰豆子ちゃんの向かう視線の先
そこにいる人物をじっと見つめてしまう
鱗滝さんが、ずっとずっと待ち焦がれた人がそこにいた
禰豆子ちゃんは今にも崩れ落ちそうなくらいボロボロになっているその人をギュッと抱きしめていて…その姿を私と同じ位置で眺めていた鱗滝さんの手が少し震えていた
「良かったね鱗滝さん。次はおかえりが言えるよ」
「……あぁ……そうだな…」
それだけ残して、鱗滝さんも炭治郎と禰豆子ちゃんの元へ走っていった
そんな幸せそうに抱き合う三人を見ながら、ふふっと笑みが溢れてしまう
さっきまでの任務疲れはやっぱり鬼なので残っていなかったらしい。だって今はなんの疲れも感じていないから
私もその場から駆けて行って、三人に覆いかぶさるように抱きつく
「おかえりなさい炭治郎!…今日はご馳走にしなきゃね、鱗滝さん」
「そうだな…そうしよう。腕によりをかけて用意しよう」
「そうと決まれば、炭治郎…傷だらけだね。診てあげるから家に入ろうか」
「え、あ、はい…ありがとう、ございます」
そう言ってよろよろと頼りなく立ち上がる炭治郎の体をひょいっと持ち上げて抱き上げる
一瞬キョトンとした様子だったけど、すぐに顔を真っ赤にした炭治郎が慌て出した