第19章 色変わりの呼吸
「そうか…今年も山の周辺は何もなかったか」
「あれだけ藤が咲き誇ってればねぇ…お陰様でもうヘトヘト…」
「今年も巡回ご苦労だったな。…おかげで試験を受けている子供たちは外からの鬼を恐れることはないだろう」
「でも問題は中の鬼だよ。…ああ、でも…山の中にいる鬼で一番強い気配を持ったやつ、誰かが頸を落としたみたい。気配がなくなったから」
「…そうか。将来の有望な子がいるようだな…」
そう言って鱗滝さんはお茶をすすった
今頃試験は終わってるだろう。色々手続きとか、支給品をもらって…それから解散になる
今日中には帰ってこられるとは思うけど…果たして結果は如何程か…
そう思っていた直後、隣の部屋からカリカリカリ…と何かがとを引っ掻く音が聞こえた
「…この気配は…」
私が最後に禰豆子ちゃんを診た時とは…大分様変わりした気配がする
鬼には鬼だが、なんだか不思議な気配が…
…というか…
「禰豆子ちゃん…目を覚ましてたの?」
「いや…ずっと眠ったままだったが…」
「…念のため…ね」
刀に手をかけて、扉が開かれるのを眺める
目を覚ました禰豆子ちゃんが鬼としての本能を剥き出しにしてこないという保証はない
鱗滝さんが眠っている間の禰豆子ちゃんに暗示をかけてはおいた。というのは聞いているけど…それが必ず効くかどうかもわからずなのだ
…ゆっくりと戸が引かれていく
そこにはぼんやりとした瞳の少女が膝をついて四つん這いでじっとしていた
「…禰豆子ちゃん…?」
…すごく、気配が私と…類似している
鬼になってからお互いに人を食べたことがないにしても…私は千年、彼女は数年という差があるはず
眠っていたここ数年間で何が…?