第18章 選別の呼吸
「うーん…やっぱり嫌な感じがする…」
目的地について早々げんなりと気を落としてため息をつく…
下級の鬼じゃなくてもこんなに藤の花が咲き誇っていればまず近づきたくもないだろう
そんな山の頂上にある会場へ、ぞろぞろと刀を提げた子供たちが登っていくのが見える
誰一人として嬉々とした表情の子供はいない…当たり前か。もしかしたら死ぬかもしれない試験なのだから
そんな列の後方に、見覚えのある顔があったので思わず「あっ!」と声を出してしまう
「炭治郎…?」
「依千さん…!お久しぶりです!!」
「君は相変わらず元気がいいねぇ。やっぱり今年の試験受けにくると思ってたよ。…随分と大きくなったね」
初めて会った時よりも体格も逞しく、身長だって伸びている…もう時期こされてしまいそうなくらいには
もう少年というよりは青年という方が風貌に合っているように見える
「鱗滝さんの修行のおかげです!」
「確かに教えるの昔から上手だったからな……炭治郎ならきっと山を降りられると信じてるよ。決して楽な試験じゃないけど頑張って行っておいで」
「はい!ありがとうございます!…また後で…!」
手を大振りに振って山を登っていく彼の姿を眺めて、少しだけ困った笑みをしてしまう
この試験は山を降りられないものの方が圧倒的に多いのだ
降りられないということは、ほぼ大半は命を落としてしまうということで…毎年ある試験でその比率が変わったことは殆ど無い
でもなんとなく…炭治郎は山を降りられるような気がして、言葉をかけてしまった
今思えば少々無責任な言葉だったかもしれない…