第18章 選別の呼吸
「ああ、もうそんな時期だっけ」
鎹鴉から来た伝令を聞いて、歩みを止める
ただいま夜の巡回中…どうやら明日の夜から選別試験が始まるんだとか
毎年毎年、選別試験が行われる山での巡回任務がある
「別にいいんだけど…いいんだけどさ…あそこすっごく私に優しくない場所なんだよねぇ…」
他の柱たちはもちろん毎日忙しく任務をこなしている
私は常に自由に現地に赴いて鬼を狩っては動き回り、狩場を転々として過ごしてる
要するに一番の暇人…ではなく、私が適任なのだ…
ただその任務地に問題がある
選別試験のある山は一年中藤の花が咲き誇っているので、下級の鬼はまず立ち寄れないようになっていて…
試験を受ける子供たちはその山の中にいる鬼を切りながら7日間生き延びなければいけない
鬼に負ければもちろん死ぬし、途中で逃げ出すことすらままならない
そんな試験中の山に下級以上の強さを持つ鬼が入り込まないように巡回するのが私の務めだ
「二年か…あの兄妹はどうしてるかな」
最後にあったのは半年ほど前だったか
初めて会った時よりはかなり体も丈夫になっていたし、技もいくつか使えていたっけ
筋は良さそうだったから、もしかしたらもっと強く成長してるかもしれない
…じき日が昇ってくる時間になるから、今日の巡回はここまでにして…近場にある藤の花の屋敷で明日の準備をしようか
目の前に見えている藤の花の家紋を掲げた屋敷に足を運んで、日に当たる前にその場から立ち去った