第17章 涙の呼吸
その鬼もなんだか切羽詰まったような様子で…事もあろうが日中に捨て身でここに乗り込んできたのだ
鬼に恐怖して動けないアオイちゃんの目の前に飛び出して庇ったことがあった…半身を切り落とされたけど、私も鬼なので今じゃそんな傷何とも無い
その日以来、私に対してかなりトゲのある対応をしていたアオイちゃんはかなり親しくなってくれた
「さ、もう泣き止んで…私はちゃんと元気でしょ?ほら!」
「…そう、みたいですね…」
パパッと軽く腕を動かしてニコッと微笑んで見せると、アオイちゃんも少しだけ笑ってくれた
そんなアオイちゃんの頭を撫でながら、まだ頬を伝う涙を拭き取る
「それにアオイちゃんが泣いてたらしのぶちゃんに見つかったとき私怒られ…」
「怒ったりはしませんよ?」
「……心臓に悪いよしのぶちゃん…!?」
本日二度目の吃驚に遭遇する…わざと気配を消してきたのか…全然気づかなかった…
安堵から来るため息を短く漏らして、苦笑いを一つ
「おかえりなさい依千さん。思ったより早かったですね」
「世間話を交えながら少し会話をした程度だから。にしてもみんな今日は随分と夜更かしさんだね」
夜…どころか、下手をしたらそろそろ朝になりかねない時刻
いつもならしのぶちゃんはともかく、アオイちゃんや仲良し三姉妹なんかは寝ている時間のはずだけど…
「少し前に誰かさんが運ばれてきたおかげで、みんな交代で診ていたんですよ」
「…私の仕業だったか…」
「そ、そんな依千さんは悪くありません!」
「ありがとうアオイちゃん…アオイちゃんは優しいなぁ」
そう言ってまた頭を撫でる