第17章 涙の呼吸
自分をどんな感情でさえ、好いてくれているのは悪い気分じゃないし…他ならぬアオイちゃんからの励ましは素直に嬉しかったので行動に表してみた
さっきよりも落ち着いてきたのか、少し恥ずかしそうに顔を赤くするアオイちゃんもまた可愛い…
本当、この子はいいお嫁さんになりそうだ
「それはそうと…そろそろ日が明けます。依千さんはこの後どうなさいますか?」
「しのぶちゃんたちが良ければ、夜になるまでいさせて欲しいなとは思ってるよ。これから薬も飲んで弱体化するし…ちょっとゆっくりしたいかなって」
「それは構いませんよ。いつでも自由にしていてくださって大丈夫だと言っているじゃありませんか」
そう言って優しく微笑むしのぶちゃんを見て、私もつられて微笑んでしまう
ここが私の家というわけではないけれど、蝶屋敷のこういう雰囲気は大好きだ
…さて、そうなるとどう過ごすか…だけど…
「ありがとうしのぶちゃん。…さぁ、そうと決まれば…アオイちゃん。私にも何か手伝えることはない?」
「そ、そんな手伝いだなんて…休んでいてください依千さん!」
「体力はとっくに回復してるし、本来鬼に睡眠や休養は必要ないから大丈夫」
そう言ってニコッと微笑んでみせる
…それでもまだ涙が止まらない様子のアオイちゃんを見て、ふはっと息がこぼれてしまった
「…私のことでそこまで泣いてくれたのはアオイちゃんが初めてだよ」
「……そ…そう…ですか」
「うん。でもやっぱり…私は笑顔を見る方が大好きだよ」
そういうと、顔をボッと染めながら…
少し視線を泳がせて、また私と向き直る
照れ臭そうに微笑むアオイちゃんの姿を見て私も自然と笑顔になる
「さ、日も昇ってきたことだし、お仕事を始めよっか!」
そうしてその日の蝶屋敷に、鬼が一人紛れ込んだ