第16章 報告の呼吸
条約…というのは私にのみ適用される約束事だ
歴代の産屋敷家当主と交わしたものが長年積み重なっていく形で、今も継がれている
その一、柱稽古には有事の際以外は手を貸すこと
その二、通常時は刀鍛冶達からの失敗作の刀を使用すること
その三、柱からの命令はお館様からの命令と同じとすること
その四、何よりも人命を優先すること
その五、どのような理由があっても人を喰らわないこと
その六、薬の摂取を怠らないこと
その七、鬼に加担した場合は上記と同じく対処すること
その八、お館様からの言葉は絶対遵守すること
その九、鬼殺隊員が窮地に陥った際は速やかに手を貸すこと
その十、それらを全て守ったのち、無惨を拘束に成功した際言葉を交わす機会を与えること
十代分の当主と交わした条約が積み重なって今では十個に増えているけれど、どれも特に苦だと思ったことはない
「こんな身になっても誰かの手助けができているのは鬼殺隊という組織のおかげだから。お館様が思い悩むほどのことは何もないよ」
「君がそう言ってくれるのが唯一の救い…かな」
「また大袈裟な!…本当の本当なんだからさ」
笑いながらそういうと、お館様も一瞬戸惑った様子を見せたけど微笑みを返してくれた
「君といると飽きないね。本当に鬼なのか疑ってしまいそうだ」
「それは嬉しいな!私にとってはかなりの褒め言葉だよ」
足を軽くパタパタと動かしながらそう言うけれど、つい先ほどまで微笑んでいたお館様の表情は少しだけ曇る