第15章 嵐のような呼吸
「まだまだ未熟だった。それが答えだよ」
「千年の時を生きている依千が未熟となると、なんとも度し難いな!」
「私からしたら今の柱の子たちの方が私なんかよりよっぽど強いと思うよ。鬼にもなれず、鬼殺隊員としても半端者…それにね、私元々剣の才がほぼないも同然だったから」
ずっと昔の話だ
刀すら握ったことのない…人も食らったことがない、そんな鬼が突然鬼狩りになるために刀を振るい始めたのだ
しかもかなりの能無しで、数年鍛錬を積んでもまともな剣技を何一つ会得できなかったのだから筋金入りだろう
でも師匠はそんな私を見捨てずに、鬼の呼吸を会得するまで面倒を見てくれた
「そもそも私の使う呼吸は、鬼であるが故に発揮できる怪力と速度を際限なく振るうことで成立してる。だからすぐ刀を折ってしまう…加減ができないんだ。この呼吸は」
だから師匠からもらった刀は使いたくない
あれを飾りとして使うのも気が引けるけど、折ってしまうよりはマシだった
稽古の時もそう。竹刀同士で鬼の呼吸を使えば、たとえ相手が柱であろうと少なからず怪我をさせる
現に昔、一度だけ怪我を負わせてしまったことがある
大したことじゃないかすり傷ですみ、相手の柱も笑って許してくれたけど…
私の一振りで人が血を流すのを見て、心底自分に嫌気がさしたものだ
「なるほど。…君は…自分自身が嫌いなのだな」
「……そう…かもしれない」
突然的を射た答えを言われて、言葉が途切れ途切れになってしまう
煉獄さんの視線が一直線に突き刺さるので、なんとなく視線をずらして下を俯く
「なら、俺から依千に対する個人的評価を言っても良いだろうか!」
「…どうぞ」
「まずはそうだな!これを最初に言っておこう!…君自身が思っているよりも、俺たちは君を過大評価している」
「………へ…?」
突然何を言い出すかと思いきや
堂々とそんなことを告げる煉獄さんの顔を思わず二度見してしまう