第14章 拘束の呼吸
出血は確かに酷かった。ならこの鉄枷はかなり妥当な案だ
もし血に飢えて、目を覚ました私が手当たり次第に人を喰らう可能性だってある
でも…なんでなんともないんだろう…流石にあそこまで血を失えばかなり消耗して、人を襲ったっておかしくはなかったはずなのに
それどころか、前よりも体が軽くなってるような気さえする
気を失っている間に…何かがあったのかも知れないけど生憎記憶がない…
とりあえずわかる範囲でのことを全て話す
「いやー油断したなー…せめて刀、もう一振持ってれば良かった」
「…依千さん…柱合会議に出てる時はちゃんとご自身の日輪刀お持ちでしたよね?理由は知ってますけど…どうしていつも失敗作の刀ばかりお使いに?」
「あの日輪刀は…師匠の形見だからね。もちろん、無惨を追い詰めてここぞって時には存分に振るうよ…でも万が一それ以外の場面で折ってしまったら…」
それは、とても嫌だった
甘えたことを抜かすなと…不死川さんに怒鳴られそうだけど。でもあの刀だけはあまり使いたくなかった
師匠…蔵で私を見つけてくれたあの若かった剣士は、後に私の師匠となって剣技を教えてくれた
一通りの基礎を修めた後、祝いだと言って日輪刀をくれたのだ
その際に私の刀は真っ白に染まって、それ以来なんの色も浴びていない
「鬼の呼吸は鬼にしか使えない力任せな技ばかり。人用の刀ではすぐに折れてしまうからね。それに失敗作とはいえ、あの刀たちだって決して劣っていることもないしさ」
仮にも刀鍛冶の一族が打った刀だ
変形、刃こぼれ、切れ味…どれを取ったとして、たとえ失敗作だとしても、市場に出回っているどの刀よりも切れる代物だ
「…そういう理由なら、これ以上の言葉は野暮ですね」
「でもありがとう。私の身を案じてくれての言葉だったんだよね」
「鬼だからといっていつも体を張りすぎです。もしもがあったら大変ですよ」
「…そうだね…正論だ。次はもう少し気をつけるよ」
あはは…と笑って頬を掻く