第6章 過去の呼吸
「あの…それで…私はこれから、どうなるんでしょうか」
鬼は血肉を食らう
それは人にとって脅威のはず
たとえ私が人を食べたことがなくても、鬼である以上その危険は拭えない
「そのことなんだけど…君は他の鬼とは性質が違うように見える。飢えはあったようだけど自制心が効くし、今も私たちに襲いかからない…一つ、提案があるんだ」
「……提案…」
「刀を振るい、自分を鬼にした者のことを知りたいとは思わないかい」
「なっ…お館様!?」
剣士が大層驚いている様子を見ると、それほどのことを口にしたらしい
当たり前だ。だって鬼は粛清対象…人の世にあってはならない異形の存在
そんなものに人の武器を与え、同族を殺せと言っているも同じこと
「お館様…そればかりは危険です。鬼は人と違い手足を失っても元に戻り最善の状態で戦に戻ります。そのような者に刀を…隊士の資格を与えるというのですか」
「そう、鬼には人と違い圧倒的な治癒力がある。肉体だって、昼間の制限を除けばほぼ無敵だ…そんな頼もしい〝仲間〟ができたら、私もとても安心できる」
…仲間と、この人は言った
昔はよく意味を理解していなかったけど、今はよく理解できる
少なくとも仲間という言葉は、人を食い、力をつけ、夜を支配する存在に対して使うものじゃない
確かに人を食らったことのなかった私だけど、そこまでの言葉をもらえるほどのことをしていない