第6章 過去の呼吸
「君には同胞狩りの使命とともに、私の可愛い子供達を守って欲しいと思っている。君にしか頼めないことだが、君を長い負の戦に縛り付けることになる。…だから決断は、君に任せよう」
「…もし、拒否をしたら……私は殺されるのでしょうか」
断る理由もない
記憶もない自分にはこれから何をすればいいのかもわからなかった
この頃の私には、自分に名をくれたこの人の言うことを言われるがままにこなすくらいしかすることがわからなかったから…もともと断るつもりはなかったけど
仮に断った時のその後を知りたくて、そう口にした
答えは明白だった
二人の空気が静まり返る
…つまり…もとより選択肢は1つだけだった
「…私はこれから、何をすればいいのかわからない。人だった頃の記憶が欲しい。どうして鬼にされないといかなかったのか…私は知りたい。だから、私はその使命を受け入れます」
布団からゆっくりと起き上がって、二人と視線を合わせる
いつのまにか体はすっかり元気になっていた
「…じゃあ、そうだね…条約を交わそう。君と私にとって、公平になるような条約を」
「…いいえ…公平はいらない。私だけが不利でもいい。ただ一つ…もし鬼の総元締めを見つけることができたら、彼と話をする機会さえくれればいい」
この体になって、数十年は経ってるはずだ
今更家族の行方は知れないし、大事なものも…多分、残ってない
だから私は、たった一つの目的さえあれば十分だと告げた
それさえなせればどんなことでもすると…そう言った
これから始まる千年を私は、条約に縛られて生きていく道を選んだのだ