第5章 薬の呼吸
彼女の両親と…そしてカナエちゃんは皆鬼に殺されている
幼い姉妹を初めて見た日のことは今だってちゃんと覚えている
二人で共に、悲しい思いをする人を助けたいと言って鬼殺隊員になった胡蝶姉妹を、今でも覚えている
今までだってそういう理由で鬼殺隊に入った子たちは見てきた
でもこの二人がすごいところは、二人とも柱の称号を得るまでに強くなっているということだ
姉であるカナエちゃんも元柱だったし、しのぶちゃんは現在の蟲柱…本当にすごく頑張っている
でもカナエちゃんは鬼に殺されてしまった
しのぶちゃんは今もきっと鬼が憎くて仕方がないだろう
鬼である私も、もしかしたらとても憎いと思っているかもしれない
千年も生きてきたのだ。今更そんな感情を向けられるのは慣れている
でも、一つだけ慣れないことがある
「鬼の私じゃ…あんなに頑張ってる女の子一人励ますことができないなんて…本当不甲斐ないな…」
今までどんな言葉をかけてきても、しのぶちゃんの表情は笑顔の奥に別の感情が隠れていた
カナエちゃんの妹ということだけあって、しのぶちゃんとも仲良くなりたいのだけど現実はそう簡単じゃない
だから早く…彼女の毒を完成させてあげたい
それが私にできる唯一の手助けだと思うから
「…さぁ、寝る支度しないと…」
アオイちゃんが整えてくれた部屋に着いて、服を着替える
ちゃんと鬼の私に配慮して、日の当たらない部屋を選んでくれている
本当に良いお嫁さんになるな…なんて感心しながら寝支度を済ませると、ちょうど良いタイミングでしのぶちゃんが襖を開けた