第1章 1限目
水を操る個性…?いや、アレは完全に治癒だろ。
だが、治癒の個性だけでは水を操る事は出来ない筈だ…。
個性を2つ持っている…のか?
累は学生時代の後輩だった。
俺はヒーロー科であいつは普通科。
全くと言っていい程接点はないはずだった。
彼女が入学して来たであろう入学式の日に、俺は訓練で保健室を訪れ怪我の治療をしてもらっていた。
怪我具合はそこまで酷いものではなかったが、ある程度軽い切り傷などは残してもらい治療してもらったんだが、扉を開け出ようと思った所で人とぶつかってしまった。
それが累だ。
どうやら入学式の途中で具合が悪くなり保健室で休もうとしていたらしい。
ぶつかり合い、倒してしまいそうになった彼女を受け止め…たのはいいが、自身の治癒で体力を消耗していた為一緒になって倒れてしまったのだ。
つまりは押し倒しているような構図だ。
慌てて彼女が自分の腕の中から這い出て来て、すいませんと謝られる。
いや、悪いのは俺だったんだが、とりあえず早く家に帰って休みたかったので、一言大丈夫だとだけ言い去ろうとしたが。
助けてくれた感謝の印です、なんて言われて頬の切り傷に可愛い猫が描かれた絆創膏を貼られた。
そそくさと保健室に入る彼女を見送り教室に戻る。
柄なんて友人に言われるまで気が付かなかったが、呆気にとられ、別に絆創膏くらい貼っていてもいいか、なんて甘い考えのせいで散々笑い者にされた記憶がある。(ちなみにマイク)
その後は何故か分からないが、彼女の方から告白され、俺が卒業する1年間の間だけ付き合った…ってだけだ。
いや、まぁ自然消滅…ってやつだな。
付き合っている間も自分は無個性だと言っていたし、個性が発動する気配もなにもなかったのだ。
とりあえず彼女に直接聞いてみるしかない、な。
ふっ…と1つ笑みを落とす。
何故だか気持ちが高揚している気がする。
その理由を考える事もなく、彼女に近付くのだった。