第1章 1限目
『わぁ…めっちゃクソ痛そう…。
ちょっと待っててね。
んーーと、何処だったかな…』
自身の鞄の中を漁り目的の物を探す。
鞄が大きいせいもあるが、物が沢山入っているので、なかなか見つからなかったが、ようやく目当ての物が見つかった。
取り出したのは、封を開けていない250ℓ程の水が入ったペットボトル。
それの封を開ける。
そして目を閉じて集中した。
すると封の開いたペットボトルの口から500円玉サイズの水の玉が浮きキラキラと輝いているではないか。
それを指で操作し猫の怪我をしている部分まで運ぶ。
見たことのない物体に更に猫が威嚇しているが、我慢してもらうしかない。
『大丈夫、大丈夫だからねー』
そう優しく声を掛け、その水の玉をゆっくりと怪我した部分に落とす。
すると水の玉は意思を持っているかのように怪我の部分に密着した。
その見た目はまるでサランラップを巻いたかの様に薄い水の膜みたいなモノになったのだ。
そしてみるみるうちにその怪我をしていた所が塞がり、吸収されて行ったかのように水の膜は消えて行った。
怪我が治ったのが分かったのか、動けるのを理解した猫は一言「ニャー」と鳴き、壁を飛び越え住宅街の闇に消えて行った。
『もう怪我するなよーー』
と見えなくなった方向に言葉をかける。
さてと、と開いていたペットボトルに蓋をし、鞄の中に放り込み家に帰ろうと立ち上がると目の前に影がさした。
『ん????』
疑問に思い視線を上にあげるとそこにはとても懐かしい顔があった。
「お前…無個性じゃなかったのか」