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〈短編〉H×H

第3章 ルナティックラブ/イルキル/BL/裏


少し汗を帯びている自身の右手を見つめた。夢の中では、この掌で キルアの身体の隅々までを丹念に撫で 悦びの声を上げさせていた。キルアの高い体温も 汗の散る髪も、小ぶりで透き通るような耳朶までも 生々しく脳裏に焼き付いていた。

「…………。」

突き上げる度、悲鳴をあげるキルアをもっと啼かせてやりたくて仕方なかった。下手くそなキスで甘えられると、その無垢な心の全てを汚してやりたい衝動が湧いてくる。たわむ陰嚢を摩り 隆起するペニスを数回しごくだけで簡単に射精してしまう様を「鋭敏で卑猥だ」と罵ってやれば、キルアは顔を真っ赤にしながら羞恥に震えていた。月の女神の加護の元で、キルアは確かに淫らに壊れていた。

「…………。」

ちらりと視線を下へ落とす。なんてことだろう、常軌を逸脱する夢を見ながら イルミ自身も朝っぱらから健全に反応しているなんて。認めても良い事実なのかすらわからなかった。





屋敷の廊下でついに愛弟とすれ違った。冷めた目で無視を決め込むキルアを呼び止め、イルミは今朝方の夢を思い出していた。

「キル」

「…何だよ」

射るような鋭い視線はイルミの知らぬ間に随分大人びている。あの夢は所詮夢であり、夢の中でこそ有効だったのだと再認識をし 心から安心する思いだった。

「オレさ、」

まるで警戒心を剥き出しにしている獅子の子だ、チリチリと敵意あるオーラを飛ばしてくるキルアに イルミは何食わぬ顔で言う。

「今朝キルとヤってる夢見たよ」

激しく狼狽 もしくは激怒するかと思いきや、キルアは落ち着き払ったまま。それどころかニタリと口元に笑みを浮かべている。

「へえ すっげ偶然。オレも見たぜ 兄貴とやってる夢」

ジーザス!!!!!!!!!!!!
さすがのイルミもこれには面食らってしまう。まかさ夢の中でまで以心伝心だとは思いもしなかった。
ニヒルに微笑むキルアは 本当に昨晩あれだけ乱れていたキルアと同一人物なのだろうか。フンと踵を返すキルアは 勝気な声色でイルミに勝利宣言をする。

「電撃一発脳天直撃。オレの圧勝」

「え?」

「あ?」

「…………いや、いい」

口は災いの元である。歯がゆくも 上唇の裏まで出かかった台詞を何とか飲み込んだ。イルミはぽつんと取り残される。呆気なくその場を去るキルアの背中を 少々名残惜しく見つめるしかなかった。

fin

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