第3章 ルナティックラブ/イルキル/BL/裏
「たくさん出たね」
指の付け根までをとっぷり濡らす白濁液を見せつけるよう、中指の腹を少しだけ舐めて見る。自身のそれと変わらぬ苦い体液が こんなにも媚薬みたいに感じられるのはどうしてなのだろう。
ぬるつく指を丁寧に舐めている自身の姿は 女神の遣いである悪戯な黒猫、下で汚される聖童は 儀式前の哀れな生贄、なんてキャスティングも悪くはない。
そしていよいよ待ち焦がれた瞬間だ。丁寧に解されたキルアの入り口に 硬く反り返った自身をぐり、と押し付けた。
「っイル、に」
「挿れていい?」
「ん、やっ」
「……っは」
返事を待つ気は甚だなかった。潤滑するそのナカは 易々イルミを受け入れ すぐに根本までを咥え込んでしまう。灯りを落とした部屋の中、可愛い顔を崩し 快楽に酔う表情を見逃すまいと 乱れた銀髪を掴んだ。まだ細やかさのある喉元も 汗の滲む狭い額も、何もかもに興奮を感じてしまう。
「どう?キル」
「んっ…ッ」
「気持ちいい?」
「く、…っア」
「ココ 気持ちいいの?」
「……、…きもち…い」
掠れた甘え声に背筋が粟立つ。無理矢理引き寄せた小さな顔に 自身の唇を近付け、口内に舌を押し込んだ。互いのそれを唾液と混ぜ合い 何度も何度も愛撫し合う。まるで餌をもらう雛鳥のように、キルアは懸命にこちらへ吸い付き泣きながら唾液の嚥下を繰り返していた。
次第に腰を揺り動かす。キルアのナカにはっきり、「突く」という感覚を与えてやる。悶えるキルアの喘ぎ声は いつの間にか高い叫びに変わっていた。
「あっ くあ、ああッ」
「キル かわいい」
衰える気がしない欲求は 淫らな思考を操作する月の女神のせいだ。熱く甘い夜は今宵中繰り返されるだろう。
◆
エロスの神様は身を清め 月に帰る時間のようだ。窓の外から 優しい陽の光が繊細に折り重なり朝の訪れを告げる。そんな中、イルミは静かに目を覚ました。
「…………。」
えらい夢を見てしまった、働ききらない頭で まず最初にそう懺悔した。事もあろうに相手は血の繋がる弟だ、もちろん愛情もあるし可愛がってはいるが それはあくまでも「家族」として 兄として、今この瞬間までそう思っていた。