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〈短編〉H×H

第18章 猟奇の国のアリス/アリスパロ/色々キャラ


⇒ act.4 三月ウサギ

「ここは………」

いつの間にか迷い込んでいたのは綺麗に整備された庭だった。アーチ状の黒っぽい草々のトンネルには 気味悪いほど真っ赤な花がいくつか咲いている。その傍らでは 梟に似た鳥がホウホウと落ち着いた鳴き声をあげていた。

その恐ろしく広い庭の一番奥の奥には 閉鎖された古城のような大きな屋敷が見えていた。オバケでも出てきそうな雰囲気に ハアと小さな溜息が出た。

「ようやく来たか」

「あ、」

「ワタシ待たされるの大嫌いね」

「…フェイタンだ、…」

夜の闇から静かに姿を現したのはフェイタンだった。苛々する風にチッと微かな舌打ちをする様子がリアルで 一瞬だけ身を怯ませた。そのキリっした雰囲気に周りの空気までもが緊張するようだった。

フェイタンは静かに振り返ると 屋敷の方へスタスタ足を進めた。

「なにぼーとしてるか 早く来るね」

「あ、はい…ねぇフェイタン えっとここは?これからどこに?」

「オマエの世界なのに言わなきゃ理解出来ないか。“イカレ帽子屋”の所に決まてるね」

ふっと眉を上げた。成る程、ここは帽子屋のイカレたお茶会会場らしい。

静かに歩くフェイタンの小柄な背中を見つめた。目の当たりにすると シャルナークとは別の意味で、なかなか思うように話せない。

「あの、…」

「無駄話なら黙てるよ」

「…。…」

ピシャっと言われてしまう。フェイタンのその格好はまるでどこかのお嬢様に仕える執事のようであるのに 微塵も従者らしい様子はないし むしろ威圧的で近寄り難くて仕方ない。

闇に溶けそうな黒い燕尾服の裾はゆらゆら揺れているが、対象的に 黒髪から生えた黒いウサギ耳は微動だにしていなかった。その風貌に登場人物の予想を当て込めた。

「フェイタンは、…“三月ウサギ”?」

「そうね」

「そっか…」

「似合わない 思うか」

「や、いや、そんなことない…!似合ってる、と思う スゴく」

「ワタシこのふざけた配役納得してないよ。ゲストじゃなかたらオマエ殺してるね」



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