第15章 A線上の恋煩い/ヒソカ/オケパロ/その他キャラ
「私はあの、…三カ月ほど前から こちらのオケでフルートを担当しています、リネルと言います」
「フルート?ああ そうだったのか」
「は、はい……っ」
会話は少しもうまく続かないが 呼び止めた以上は怯んでなんかいられない。今日こそは言うと決めていた一言を 直球でヒソカへ投げ込んだ。
「あの 良かったら…こ、この後一緒にお食事でもどうでしょうかっ……!」
リネルは目線を下に外したままトートバッグの紐を握り締める。用意してあった口実を一息で説明した。
「私の叔父が最近イタリアンレストランをはじめまして!音楽が、叔父は特にバイオリンが好きな人でして、店内でもバイオリンの生演奏をしたり有名な名器をいくつか所持もしていてですね。…それで、ヒソカさんのご趣味に合うかはわからないのですがその、」
「構わないよ」
こんなにも簡単に了承が得られるとは思いもしなかった。ぽかんと口を開けたまま リネルはヒソカを見上げることになる。
「イタリアンもイイけどね。この近くにボク行きつけの所があるんだ」
「ヒソカさんの、行きつけ…?」
「ああ。ココでの練習の後はいつもそこに行くから違う場所って言うのはチョット違和感があってねえ キミさえ良ければエスコートさせてもらうけど?」
ヒソカの表情は実に朗らかだった。
「どうかな マドモアゼル」
彼の伸びた背筋に真っ直ぐな眼差し。惜しげも無くそんな事まで言われてしまっては 正統派な王子様のようにも見えてくる。
バイオリンケースを片手に持っただけのラフな立ち姿がなんて絵になるのだろうと、溜息を覚えるしかなかった。