第14章 恋心/イルミ/カオナシパロ/シリアス
頭の一部がじんと痺れて そこから何かが染みてくる。
「リネル オレが欲しい?」
視界に靄がかかり 彼の顔が急に至極美しく映る。薄い唇が紡ぐ誘いの言葉が呪縛となって脳内を蝕む。すでに恐怖なんてない。あるのは むせ返るほどに強く激しい単純な欲求だけだった。
その手で肉を裂き臓器を抉り、細胞のひとつひとつまでもを 脳細胞に刻んで欲しい。
身体を突き上げ、疼く胎内に汚れた愛を深くたっぷり注いで欲しい。
食い千切られたその後に、彼の血となり肉となり永遠の融合を果たしたい。
両手を伸ばす。乾いたリネルの指が 黒い物の怪の冷たい頬に触れた。
「あなたが欲しい」
愛おしい人を手に入れる方法を知らない、無垢がゆえに残酷な恋心の結末は単純明快だ。互いが互いを求めるのなら 一つにしてしまえばいいのだから。
fin