第14章 恋心/イルミ/カオナシパロ/シリアス
「ようやく2人になれたね。リネル おいで」
「……っ、……」
「酌くらいしてよ」
見えないのか、気にならないのか。何事もなかったように差し出される紅い盃には 女の血が異色の赤を残している。
拒否など出来る筈もなく 近くに転がる酒瓶を取りゆっくり物の怪に近付いた。緊張から瓶口が盃にぶつかりカチャカチャ小さな音を立てる、注がれる透明色の酒は赤と混ざり ねじれた画を描き出す。
「リネルも飲む?」
「……いえ」
「何か食べる?」
「……いいえ」
「あ じゃあコレはどうかな」
すらっと差し出された片手のひら、そこから溢れてくるのはこの世界最高の褒美と言える沢山の金の塊だった。
「あげるよ」
「い、いりません」
「どうして?ここの連中はみんなこれを欲しがってたのに」
「私は、欲しくありません…」
「なら なにが欲しいの?」
拒否をされたら黄金もすぐに塵になる。畳に捨てられる金がパタパタパタと音を出す。盃も共に手を離れれば 残る酒がぱしゃりと広がり 器が軽い音を放つ。
「リネルが欲しいものなら何でもあげるよ。何が欲しいの?」
「いりません、あなたからは何も欲しくない…っ」
「え どうして?」