第59章 キスまで100㎜/若イルミ/裏
今更ではあるが この家の子供達は皆、外見にしろ内面にしろ 可愛いのである。日頃の我が道を行く態度、時折放つ気味の悪いオーラが 筆頭すべき長男に対してその共通項を久しく忘れさせていた気がする。
「可愛いと出来ないの?可愛いって言うのは普通褒め言葉だししたくなるのかと思ってた」
「そうなん、だけど…」
「どうするの?何もしないなら戻るよ?」
「え……っ」
そうは言っても 自分からはなかなか行動を起こせそうにない。互いを試すようにただ見つめ合うしかない。お預けをくらうこの状況を打破するには どうすればいいのだろう。甘いモヤのかかる頭を使って考えるしかなかった。
イルミはふいに首を傾げる。よく見せるその仕草が 今日はとてもあどけなく見え ぎゅっと心を掴まれる。
「一応言うけど有料だからね」
「ウソ…、」
「金払って、見て終わり。ホントにそれでいいの?」
「……ッ、」
いいワケがない。それでもやはり自分からは動けない。今日はなかなか埋まらない100mmがもどかしくてたまらない。